TogoVar で日本人集団での頻度と病原性を調べ、予測ツールと立体構造で変異の影響を確かめる
← 動画でワークフロー 一覧へアミノ酸を1つ置き換えるミスセンス変異は、病気の原因になることもあれば、まったく影響のない個人差であることもあります。その見極めには、まず「どのくらいの人が持っているか」という頻度、次に「タンパク質の機能を損なうか」という予測、そして「立体構造のどこで起きているか」という位置の情報が手がかりになります。このワークフローでは、日本人集団のバリアント頻度を横断的に調べられる TogoVar から出発し、PolyPhen-2 と Ensembl VEP で影響の予測を確かめ、最後に AlphaFold DB でタンパク質の立体構造の上に変異の位置を置いて見ます。
ワークフロー
TogoVar は、複数の国内研究プロジェクトから得られた日本人集団のバリアント頻度と、それに関係する疾患情報や論文をまとめたデータベースです。世界最大級の gnomAD でも、日本人に特化した頻度は十分に得られません。この動画では、日本人に特徴的な遺伝性疾患のバリアント(GJB2 遺伝子の c.235delC など)を例に、データセットごとのアレル頻度と臨床的意義を確認します。さらに OCA2 遺伝子のミスセンスバリアントを例に、SIFT・PolyPhen-2 による予測と、臨床的な判定が分かれる場合があることも紹介しています。
続いて、もう一歩踏み込んだ使い方です。Advanced search では、疾患名・遺伝子名・バリアントの種類などの条件を組み合わせて、目的のバリアントを絞り込めます。この動画では、もやもや病に関連する RNF213 遺伝子のバリアントを例に、日本人集団の頻度を gnomAD の各集団(東アジア、南アジアなど)と比べます。また、肺がんに関連する EGFR 遺伝子のミスセンスバリアントを例に、SIFT・PolyPhen-2 のスコアや ClinVar・MGeND の臨床的意義をあわせて評価する方法を紹介しています。
TogoVar に表示される PolyPhen-2 のスコアは、どのような根拠で計算されているのでしょうか。PolyPhen-2 は、多くの生物種の配列を並べたマルチプルアラインメントから分かる進化的な保存性と、タンパク質の立体構造の情報を考慮して、アミノ酸置換がタンパク質の機能に影響するかを予測するプログラムです。この動画では、ALDH2 遺伝子の rs671 を例に、UniProtKB の ID とアミノ酸置換を入力して予測結果を読む方法を紹介しています。ステップ1・2で見た予測スコアの意味を、ここで確かめましょう。
1つの予測ツールだけで判断するのは危険です。Ensembl Variant Effect Predictor(VEP)は、バリアントがどの遺伝子・どの転写産物のどの領域に位置し、どのようなアミノ酸の変化を起こすかを示すとともに、タンパク質の構造や相互作用への影響に関する予測をまとめて表示するツールです。この動画では、ClinVar で見つけたバリアントを、バリアントの ID や HGVS 表記で検索する例を紹介しています。PolyPhen-2 の予測とあわせて、複数の根拠が同じ方向を指しているかを確かめます。
最後に、変異したアミノ酸の位置をタンパク質の立体構造の上で確かめます。AlphaFold DB は、AlphaFold で予測された立体構造のデータベースで、UniProt に登録されたヒトのタンパク質の予測構造を検索して表示できます。変異がタンパク質の内部にあるのか表面にあるのか、ほかの領域と接する場所にあるのかによって、影響の大きさは変わります。この動画では、検索方法と予測構造の見方、予測の信頼度や利用時の注意点を紹介しています。実験で決定された構造が PDB にある場合は、そちらも確認しましょう。
まとめ
日本人での頻度を調べる → 集団ごとに比べて評価する → 予測の根拠を確かめる → 複数の予測を見比べる → 立体構造の上で位置を確かめる。頻度が高ければ病気の原因である可能性は低く、まれで、予測ツールがそろって影響ありとし、立体構造の重要な位置にあれば、注目すべき変異の候補になります。ただし、予測はあくまで予測です。頻度・予測・構造・臨床的意義という複数の視点を重ねて、はじめて判断の根拠になります。
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