読む側から、描いて共有する側へ
← 動画でワークフロー 一覧へパスウェイ図は、論文で眺めるだけのものだと思われがちです。しかし公開データベースの図は検索でき、自分の解析結果を重ねることができ、さらに自分で描いて世界に公開することもできます。このワークフローは、既存の図を調べるところから始めて、解析データを載せ、最終的に自分で描いて公開するまで、パスウェイ図との付き合い方を段階的に引き上げていきます。
ワークフロー
WikiPathways
まず、すでにあるものを探します。WikiPathways はコミュニティが作成・維持している生物学的パスウェイ図のデータベースで、ライセンス的にも自由に使えるのが大きな利点です。論文中の図をそのまま流用するのは権利上の問題がありますが、ここの図なら発表資料にも安心して使えます。自分の興味ある経路がすでに描かれていないか、まずは確認しましょう。
Reactome
WikiPathways がコミュニティ主導なのに対し、Reactome は専門家が文献に基づいて精緻にキュレーションした経路データベースです。反応の階層構造をたどりながら、どの分子がどの反応に関与しているかを厳密に追えます。まずは基本操作編で、経路の探し方と図の読み方を身につけます。次のステップの土台になります。
Reactome
ここが転換点です。Reactome には自分の解析結果、たとえば発現変動遺伝子のリストを経路図の上にマッピングする機能があります。一般的な経路図が、自分のデータで色づけされた図に変わります。「経路のどこが動いていて、どこが静かなのか」が視覚的に分かるので、結果の解釈が一気に進みます。RNA-seq のワークフローとつながる部分でもあります。
PathVisio
既存の経路図に、自分が見つけた分子が載っていない。よくあることです。PathVisio はパスウェイ図を自分で描画・編集できるツールで、既存の図を下敷きにした改変もできます。しかも描いた図は WikiPathways へ公開して、他の研究者に使ってもらうこともできます。読む側から描く側へ回る、このワークフローの中心となる回です。
Pathway Figure OCR
締めくくりは、少し変わった道具です。膨大な論文に載っているパスウェイ図は、これまで検索できない情報でした。Pathway Figure OCR は論文中の図を画像解析して分子名を抽出し、検索可能にする試みです。「この遺伝子が描かれている図を含む論文」を直接探せます。データベース化されていない知識にアクセスする、新しい入口です。
まとめ
調べる → 精緻に読む → 自分のデータを載せる → 自分で描く → 論文の図まで探す。パスウェイ図との距離が、順に縮まっていく構成になっています。とくにステップ4まで進むと、「この経路の図がないから作った」と言えるようになり、それ自体が研究コミュニティへの貢献になります。解析結果を載せたい方は、先に「公共RNA-seqデータを再解析する」を通ってくると噛み合いがよくなります。